国立八雲病院の機能移転に関わり移転先での医療の充実と職員の雇用確保を求める声明

機構、コロナ禍で患者長距離移送を強行 9月1日 国立八雲病院機能移転

国立八雲病院の機能移転計画が出されて5年間、全医労は八雲支部をはじめ、全国の仲間とともに「患者の命と人権を守る」「職員の雇用を守る」ために機構本部との交渉を重ねてきましたが、機構はコロナ禍の8月、患者移送を強行し、9月1日、八雲病院の機能は函館病院、北海道医療センターに移転されました。

全医労は引き続き、国立医療の充実強化と仲間を守るためのたたかいを展開していく決意で、以下の声明を発表しました。

国立八雲病院の機能移転に関わり移転先での医療の充実と職員の雇用確保を求める声明

 独立行政法人国立病院機構(以下「機構」と表記)は2020年9月1日、国立八雲病院の機能を北海道医療センター(札幌市)、函館病院に移転し、八雲病院を事実上廃止した。
 全日本国立医療労働組合(以下「全医労」と表記)は2015年6月の国立八雲病院の機能移転に関する基本構想発表当時から、「札幌に筋ジストロフィーの医療・研究機能を設置すること」には賛同するものの、札幌、函館に行けない患者・家族のためも、八雲病院の廃止計画の見直し・後医療確保を求めて、地域の住民、患者・家族とともにたたかってきた。
 これに対し機構は、2020年2月26日、新型コロナウイルス感染症が拡大し、政府が「感染拡大防止の重要な時期である」と発表したその日に八雲病院の機能移転日を2020年9月1日と正式に発表したのである。
 そもそも移転計画自体が、八雲から80㎞離れた函館、245㎞も離れた札幌とこれまでの機構の患者移送とは比較にならない遠距離を重症心身障害、筋ジストロフィーの患者を移送するという無謀なものであった。さらにコロナ禍によって準備が大幅に遅れ、感染対策なども不十分であったことから、全医労は患者家族、住民、医労連、国公労連と共闘するとともに、国会議員などの協力を得ながら「万全な感染対策、移送計画が整うまでコロナ禍の患者移送は延期せよ」と求めてきた。同時に廃止計画には反対しながらも、札幌、函館に行きたいと望む患者もいるため、この距離を安全・安心に患者移送するための綿密な移送計画、あわせてコロナ禍における万全な感染対策を早期に提示することを求め続けてきた。
 しかし、機構の患者移送計画が正式に提示されたのは、8月7日であり、函館、札幌への患者移送の10日前であった。コロナ禍であり、スタッフ間の会議等も十分にできない環境、移送シミュレーションも不十分ななかで患者・家族、そして移送に関わる職員も移送直前まで不安な日々を過ごしてきた。わずか10日前に出された移送計画についても、全医労の追及により改善はされたものではあったが、決して十分といえるものではなかった。
 このような中で、強行された患者移送であるが、安全に全患者移送ができたのは、患者の命を守るために懸命な対応を行った八雲病院及び他の機構病院応援スタッフの努力と患者の協力があったからこそであり、機構の移送計画が万全であったとは到底言えるものではない。全医労のみでなく、多くの国民、報道機関からも「この時期に患者移送をするべきではない」との声が上がる状況の中で、患者の命と人権を軽視したと言わざるをえない機能移転、移送計画を強行した機構の責任は重大である。
 確かに、患者移送は終了し、八雲病院の機能は函館病院、北海道医療センターに移転された。しかし、機能移転の目的としていた「移転先病院の機能の充実」に基づき患者がこれまで以上に充実した療養生活を送ることができること、転勤せざるを得なかった職員、受け入れ先の職員が安心して働き続けられる職場環境とすること、あわせて今回の機能移転により退職を余儀なくされた職員の再就職確保等々最後まで機構が果たすべき課題は山積している。
全医労はあらためて、コロナ禍において患者移送を強行した機構の暴挙に抗議するとともに、八雲病院の事実上の廃止計画中止・撤回に向け、共にたたかっていただいた「国立八雲病院を守る会」をはじめ全ての仲間に心からの感謝と敬意を表するとともに、引き続き国立病院の充実強化と仲間を守るたたかいを展開していく決意を表明するものである。

2020年9月1日

全日本国立医療労働組合中央執行委員会

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